最優秀賞 – 賞金5000円
優秀賞 – 賞金2500円
総評
個別感想
02【その物語の主人公】
開始早々吹き出しそうになり、途端によくある日常へとフェードインしたのが何とも言えぬ衝撃を与えてくれる一作。制約を感じさせないどこにでもあるノベルゲームの体裁を保っている点には安定感がある。
穏やかな雰囲気の中でどこか突拍子のない中二病患者予備軍の主人公には何か近いものを感じる。ベタな登場人物というのも個人的には好きで、こんな幼馴染が欲しいと主人公に嫉妬したが二次元なので諦めた。全体で通して見れば面白いが序盤の場面転換がやや急だったのではないか。それだけが気になった。
03【Diet Heart】
ごく自然でいて軽やかにおかしな話をするノリに少しニヤニヤしてしまう乙女ゲー寄りな一作。制約の多いノベルゲームのコンテスト、という枠を見事に取っ払っているある意味反則のシステムが光る。ジャンルを問わず成年向け、乙女ゲー、BLと何でもプレイする私にはラブラブっぷりが実に美味しい。ゲームとしてきちんと遊ぶことが出来、登場人物の駆け引きを楽しめるのは実にいい。全体的にシナリオ、ゲーム性共によく練られている――が、デフォルトのフォントで表示されない漢字があり少し残念だった。
04【アンバランス】
たった数回クリックして思う。これは昔懐かしいハードボイルドな何かを感じるな、と。雰囲気がいい一作。この作品もまた短いなりの表現、短いなりの展開というものを上手く活用し一つの掌編となっている。どこにでもいる主人公とどこか他人事でありながら毎日どこかで起きる出来事。それは重く、物悲しい。表現は基本的に雰囲気相応だがたまに軽い話題も出てくる。しかしBGMがそれを感じさせない。選択肢はあるものの些細な変化のみで大した影響はなく違った結末も見てみたく思わされた。
05【月槍譚 -Mind of A Lunatic-】
祭事、儀式。BGMを聞くなり、背景に視線をやるなりそれは浮世絵離れした何かではないかと想像させる一作。ミステリーやサスペンスといったものには結末が必要だが、ホラーはそうとは限らず、この作品の帰結はホラーのそれに近い。ドラマだの小説だのといった様々な媒体で使い古された舞台、人物。まるで物語を途中から見始めたかのような展開。ストーリーに起伏はなく二人の会話、憶測が飛び交う。何故なのかと思考する姿を見て私も少し考え込んでしまった。淡々と進むのはテンポのよさによるものが多い……しかし何かが起こる訳でもなく期待していた分残念だった。
06【Braver’s Tail】
これは読むRPGそのものだ。役割を持つ者がいればそれはロールプレイングなのだと納得させてくれた一作。始まりが結末であり結末がまた新たな始まりとなり、そしてそれはループする。エンディングを抽出したかのような感覚。熱く、ドラマチック、そして――とたった20KBに必要な要素が詰め込まれているにも関わらずあっさりしている。かといって何も無いままではなくストーリーは確かに進展する。善悪の価値が自己の主観であることを理解させる。これといっておかしな点は無いが答えが出なかった場合の展開がどうしても気になった。
07【重奏世界のイデアル】
何も起きずに進むストーリー。それが既に何かが起きた後だとは誰にも分からない。必ず存在する裏側に視点が向けられた一作。今回のエントリー作品では唯一視点が切り替わる。それも途中でころころ変わるのではなく、シーンごと。中高生の適当な話し声が横から聞こえて来た時の気分でプレイしていたように思う。上辺だけしか分からない。しかし視点が切り替わることによってその何気ないシーンが重要なシーンであったと知ることが出来る。大した関係でも無く名前を見ただけでこうも行動出来る主人公(?)みたいな友人が是非欲しい。
08【きおくさがし】
ありがちなものを少し弄ってまた別なものに変化させる。考えることによって何でも新たな作品に昇華出来ると気付かせる一作。記憶ネタというものは使い勝手がいいからか割と色んな物語に出てくる。この作品もまた記憶を題材にした作品と言える。一般的にお馴染みの記憶喪失にSFではお馴染みのループ。その二つが融合するとそれはお馴染みではない何かとなった。――と言ってみたもののユーザーからすればループ要素はなく実際にSFとして見るほどのループでもないというのが事実。更に何度か繰り返されるかヒロインを病んだ少女に設定すればもっと味が出たかもしれない。
10【3dots】
メタか。はたまたノンフィクションか。まさかそんな内容で来るとは思っていなかっただけに予想外だった一作。次回からの考えを見透かされたようで主催者としては心苦しいやら何やら何とも言えない感情で溢れる。コンテストに挑戦する人間側の物語が展開しつつ進めれば進めるほどに主催者不要な空気になって泣きたくなった。文化祭で本気を出し切って馬鹿をやるそんな感覚が一番近いだろうか。ゲームとしても充分によかった。バカゲー的な作品をプレイしたいと思っていた私はかなり満足。Lens*Typeさんの次回作にご期待下さい!
11【夏休みin宿題】
ドキュメンタリーが始まったかと思えば懐かしい話題でノスタルジックで嫌な記憶を思い出させる一作。やけにナレーターのやる気っぷりが凄まじく音楽もこれまたやたらとやる気満々。焦る気持ちがよく伝わる。最初からずっとテンションが高く全力でビーンボールを投げてくるような恐ろしさと馬鹿らしさがあった。結局こうなる、という予想は見事に的中したが思っていたよりは綺麗に終わらせてくれた。しかし終盤で一気にテンションが落ちてしまっているのが残念。最後までテンションを維持して欲しかった。
一週間の制約を感じさせない作品は他にもあった。だがこれはむしろ長い時間を掛けて作られたかのように錯覚する一作。ユーザーの興味を引く展開に仕上げ、一つひとつの文や台詞を取ってみてもよく出来ており良作の学園物となっている。登場人物の制約、モブキャラ、無機物。制約内でどこまでの表現が出来るかを教えてくれる限界ぎりぎりの完成度だった。ノベルゲームにおける演出面の重要性というものも身を以て体験することが可能で飽きずに最後まで話を進められる。話を進めながらクレジット表記を行うのは映画的でありノベルゲーム的とも言えた。若干のクセ以外は万人に好かれる要素ばかりだ。